打者天国コロラドで、まさかの”最終登板”になるかもしれないマウンドを託されたベテランは、静かに、しかし力強くその期待に応えてみせた。

QS達成の内容、そして山本由伸と並ぶ日本人トップタイ
菅野智之は現地時間7月31日(日本時間8月1日)、本拠地クアーズ・フィールドでのロイヤルズ戦に先発。標高が高く打者有利な球場として知られるデンバーで、7回途中1失点・無四球・2奪三振とクオリティスタートを達成し、自身メジャー最多となる11勝目(4敗)をマークした。悪天候による1時間の開始遅延も影響を感じさせない立ち上がりで、初回はわずか8球で3者凡退。これで6月以降は負けなしの7連勝、11勝は山本由伸と並んで今季の日本人投手トップタイという数字になった。36歳、メジャー1年目のシーズンとしては上出来を通り越した結果と言っていい。
なぜ「過小評価」なのか——1年8億円の契約とチーム状況
菅野は昨オフにFAとなった際、1年510万ドル(約8億円)という決して高額とは言えない条件でロッキーズと契約した。移籍先はナ・リーグ西地区最下位、首位ドジャースとは26ゲーム差という低迷チーム。それでも19先発・防御率4.47・11勝4敗と勝ち越しを続け、投打ともに苦しむ球団の数少ない安定戦力になっている。この”格安契約でチームを牽引する”構図こそが、米国ファンの間で「スガノは過小評価されている」「ロッキーズ史上最高の契約だ」という評価につながっている背景だ。低迷球団の中で数字を積み上げてきたからこそ、トレード市場で改めて注目される存在になった。
トレード期限前の”最終登板”、スタンディングオベーションの重み
ロッキーズにとってのトレード期限は米東部時間8月3日午後6時(日本時間4日)。1年契約のベテラン右腕である菅野は、先発補強を狙う他球団への放出候補として現地でも名前が挙がっており、この日の登板が「ロッキーズでの最終登板になるかもしれない」という空気の中でのマウンドだった。だからこそ、降板してベンチに下がる際に本拠地ファンから送られたスタンディングオベーションには、通常の勝利投手への拍手以上の意味が込められていた。低迷するチームの中で誠実に投げ続けてきた投手への、感傷を帯びた別れの拍手という趣きだ。
- MLB Japan公式の投稿には「山本由伸と並んで日本人投手トップタイの11勝目到達」というコメントが添えられ、日本人投手同士の勝ち星争いという角度でも注目を集めた——大谷翔平の陰に隠れがちな2人の投手成績が、こうした形で並べて語られること自体が今季の日本人投手陣の充実ぶりを物語っている。
- 現地ファンからは「見事な登板だ!素晴らしい投球だった!」という称賛と同時に、「スガノさんが去ってしまうのを見るのは辛い。だが、彼はプレーオフを狙えるチームにいるべき存在だ」という複雑な本音も——低迷球団のファンならではの、選手の将来を思う切なさが滲む反応だった。
- 日本のファンからも「菅野さん、どこ行くのかなー?」「寂しいな」「泣かないで」といった声に加え、トレード先候補として噂される球団を挙げて「Wソックスへようこそ」と気の早い歓迎コメントも見られた——まだ何も決まっていない段階からこうした反応が出ること自体、菅野の株がどれだけ上がっているかの表れと言える。
SV編集長:勝ち星の数より、スタンドが立ち上がったタイミングの方がこの試合を物語っている気がする。
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